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【現在プレイ中のゲーム】DARK SOULS リマスター(PS4)/スプラトゥーン3 【ソシャゲ】グランブルーファンタジー/インペリアルサガEC

2024/02/07

ダークソウル 二次創作【樽の中に想いを詰めて】

ラレンティウス独白形式、これまでの雰囲気をぶち壊す短編。
それがどのような形であれ、生存する道があってもよいではないか。
亡者はそう考える。

【樽の中に想いを詰めて】

霞む視界、遠くなる意識に、ふと彼に似た姿を覚える。
どうやらいよいよ、お迎えが来たらしい。
やがて火が小さくなるように、意識は途絶えた。

──目が覚めると、俺は樽の中にいた。

わけが分からないが、この感覚だけは今でもはっきりと覚えている。出来れば思い出したくもない類ではあるのだが、俺は今、確かに樽の中にいるのだ。
しかし、違和感がある。身体にまとわりつく、じめじめとした触感、湿った地面のような匂いもする。

樽から唯一出ている頭でかろうじて辺りを見回してみると、壁には白く細い蜘蛛の糸がそこかしこに纏わりついており、見たこともない異様な空間だ。
額に、じわりと汗が滲む。亡者となったはずの身にも、不安や焦燥といった感情は残っているらしい。
ひたひたと、足元で何かが動くのを感じる。背中側からは、何か大きな存在の気配、そしてパチパチと薪が爆ぜる音もする。
壁が煌々と照らされている様子から、炎が燃えている事は想像に難くない。なるほど料理の準備は万全のようだ。
しかし樽に入れるなら、せめて頭のてっぺんまで漬けてほしい。隠し味は恐怖というスパイス、とでも言うつもりなのか。

二度に及ぶこの失態に、助けを待つ猶予は今度こそないだろう。……いいや、俺は往かなくては。
あの時、先へ進むと決めたのだ。
たとえ亡者になろうとも、俺の意思がある限り進んでいかなくては彼に合わせる顔もない。
覚悟を決め右手に火を集中すべく力を込めようとした瞬間、燃え上がる炎の音、揺らめきと共に、壁に影が映し出される。
思わず首を回して、その影の主を見やる。

俺は夢でも見ているのか。
忘れるはずもない、彼だ。

いつも通りの亡者の姿で、見間違えるはずもない。
不意に目頭が熱くなる。樽に詰められたまま泣く自分の姿を想像すると更に泣けて来るが、いや待ってくれ。
感情の整理が追いつかないまま、彼はこれまでの出来事を話してくれた。

病み村の毒沼で、倒れているところを助け出してくれた事。
全身に回っている毒を抜くため、毒に効く苔を樽に敷き詰め漬けてくれた事。
毒に詳しいという卵背負いや姫に手伝ってもらった事。

──そして、毒は完全に抜ける事はなく、一生を樽の中で過ごすしかないという事。

彼は申し訳なさそうにうなだれてしまったが、命が助かっただけありがたい。それどころか、またこうして友と話せるのであれば、樽の中も悪くはないだろう。
そう伝えると彼は元気を取り戻し、ニカッと笑うと今度はこう続けた。

「樽には仕掛けがある」と。

試しに腕を動かしてみてくれと言われ、とりあえず肘を曲げようとすると肩から先が樽の外へ。
足を伸ばそうとすると底が開き、大地へ確かに立ち上がる。
仕掛け樽、というらしい。
なにがなんだか分からない。分からないが、俺は亡者よりも愉快な存在になってしまったようだ。

彼は満足そうに親指を立て、俺に笑いかける。
俺はそれに応えるよう、力強く頷いた。

樽の中であろうと、愉快な姿だろうと関係ない。
呪術の火が、今ふたたび俺の中で燃え上がり、新たな行く末に胸が躍る。
そして、隣に友がいる。今はそれだけで充分なのだ。



『仕掛け樽』

手足と頭が出せるように作られた、木製の樽
逆に樽の中へ全身を引っ込めることも可能であり、見張りからの目を欺く必要があれば使うといいだろう
俊敏な動きは不得手であるが、強固な鎧としても充分機能する

かつて癒えぬ毒を受けた大沼のラレンティウスが、己の使命を果たすためにつかったとされており
中には毒を中和するための苔が詰め込まれている
その調合は、毒の呪術をつくり出した呪術師によるものだという
毒を扱う者は、また解毒にも精通しているのだろう

木製ゆえ、火が弱点である
しかし彼の呪術師は、それをものともせず困難に立ち向かう
その姿は、きっと後世において、大樽のラレンティウスと呼ばれることだろう

2 件のコメント:

  1. まさかの展開すぎて爆笑しました🤣🤣
    でもラレンティウスはずっと樽の中にいた方が安全かもしれない…

    フレーバーテキストがいい味出ていて最高でした😆

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    1. 麻さばカン2024年2月10日 1:53

      樽に始まり樽に回帰する、そうして生命は繋がっていくのだと思います(謎理論)
      コメントありがとうございます!L('ω')┘三└('ω')」

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